低カロリーで低脂肪、魚介類を多く使う日本食は健康的で、日本人が長生きの理由の一つになっています。2013年12月には、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。和食が登録された理由は、①多様な食材とそれを生かす工夫、②バランスのよい健康な食、③自然の美しさの表現、④正月などの年中行事と関連し家族や地域の絆となっている、ことにあると、江原絢子先生は述べておられます(思文閣出版)。和食の基本形である「一汁三菜 = 飯、汁、三種の菜(おかず)、漬け物(香の物)」は、平安時代末期頃には成立しており、魚介類、鳥類を中心に多彩な料理が用意されました。 その後和食は、各時代の人々に会うようアレンジして絶えず変化してきましたが、得られた食材を大切に調理する心は継承されてきました。

 国民栄養調査によると、1950年の日本人の食生活は、総エネルギーの77%を穀類から摂取していました。米や麦の飯をお代わりして食べていた時代です。その後、1960年代初め頃から米の摂取量が減少し、1980年には穀類の摂取エネルギー比率は5割をきり、 現在では穀類が40%、脂質が30%程度と欧米の食事に近づいております。どの時代の食事が最も健康的かを調べたネズミの実験によると、1975年型の食事を食べたネズミが最も長生きで、がんの発症が少なかったそうです(東北大 都築毅先生、読売新聞記事より)。この頃の食事は昔ながらの日本食の良さに、洋食がほどよくプラスされ、食材が増えて卵等の摂取量が増えました。また、魚介類や大豆、果物、海藻、緑茶も豊富で、食物繊維やポリフェノールなどが多く含まれていました。それに比べ、現在の食生活ではハンバーガー、フライドチキン、ピザなど動物性脂肪の多い食品が好まれ、グルメ番組では「ジューシーさ」がうまさを伝える表現として使われています。ジューシーとは肉汁すなわち動物の脂に他ならず、カロリーが高いだけではなく、血中のコレステロールを上げて動脈硬化を進めてしまいます。一方で、お昼の外食メニューは、ご飯の大盛り・特盛り、ラーメンの替え玉、ラーメン炒飯、うどんやそばのめん類と「かやく」ご飯・おにぎりのセットなど、炭水化物のオンパレードです。私たちの日々の食生活は、伝統的な和食とはほど遠く、以前よりずっと簡略で粗末になっております。
 今回、和食がユネスコ文化遺産に登録されたのを機に、ご飯(軽く1膳)を中心にして、主菜には魚や肉などの料理と、副菜には何種類かの野菜、芋、豆類、きのこなどを組み合わせ、具沢山の汁からなる「一汁三菜の食事」を心がけてみませんか?

今城 俊浩
一汁三菜