昨年の調査(日本)では、魚類や鳥類なども含めて何らかのペットを持っている家庭が三分の一あるそうです。その中犬は最多で14.2%、猫は9.9%でした。しかし年々犬は減少傾向、猫は増加傾向で、近いうちに犬と猫が逆転しそうです。犬は世話がかかるのと、高齢者の家庭では散歩が大変、というところでしょうか。

古くから人々は、愛玩動物と暮らしてきました。アニマルセラピーの効能はよく知られていますが、犬または猫を飼っていると、66%の家庭で“家族の会話が増えた”というデータがあります。また不安神経症のリスクを減らし、血圧が安定して心疾患を持つ患者の1年後の生存率が上昇したそうです。Medical News Todayに、動物が身近にいると、特に小児では、アレルギーのリスクが下がるとの報告がありました。これは衛生仮設を支持するものかも知れません。様々な「ペット効果」がネットでにぎわっておりますが、いずれも複雑な要素の入り込む調査ですから、信頼できるデータとするには、細やかな分析が必要かと思います。しかしペットが生活の場にいると、自然に笑顔になるのは確かでしょう。我々が訪問する介護施設で、子犬を飼っているところもあります。往診先のお宅に、でっかい猫がドデッと座っている光景は、忙しい中でもしばし心温まる光景です。ベッドに寝ているお年寄りの幸せ度が、少し高いように思いました。
我が家には猫が二匹います。8歳のタマ(茶トラのオス)と6歳のフク(三毛のメス)です。両者とも保護猫ですが、タマは生後4カ月まで獣医さんのところで大切に育てられ、フクは生後1カ月未満(獣医さん推定)で、顔中目ヤニにまみれて運ばれました。殺処分寸前で拾われたようです。獣医さんの指導の下、猫ミルクで育ちました。性格は大違い、おっとりしたタマとすばしっこくて元気を持て余すフクは、その後仲良く一つ屋根の下で暮らしています。両者とも、今や我が家の存在感ある家族です。夕食後のひと時は、この子たちとの一日分の濃厚な交流の時間で、性格の違いを楽しんでいます。猫は“家”が好きです。いつも家族と一緒にいたい。タマは休みの日など、家じゅうどこへでもついて回ります。活発なフクは、探検大好き。季節になれば、蝶やトカゲを追いかけて、時には小鳥を捕まえてきたこともあります。引き離して逃がしましたが、手負いの体で何とか生き延びてくれますように。我が家には、猫窓がいくつかあります。そのくぐり方が、性格を表しています。フクはダダ―と飛び込み、前足でハッタと止まってバーッタリ、歌舞伎役者が花道の七三で大見得を切るポーズ!一方タマは、前足をそっと忍ばせ、あたかも茶室の躙り口を、品を作って忍び入る風情。
動物の心を科学する分野は京都大学のお家芸ですが、近年猫の心理分析に取り組んでいます(CAMP-NYAN)。チンパンジー、オランウータン、犬、ラットの研究はすでに行われていますが、猫の本格的な研究は始まったばかりとのこと。餌やおもちゃで釣ろうとしても、気が向かなければそっぽを向く猫は、研究しにくいことでしょう。
猫を可愛がる人は結構いるようで、今年は猫ノミ騒動が何件かありました。猫ノミは、一見それとわかる特徴的な症状です。たまらない痒さで、かきむしりながら受診されます。ご本人も猫ノミであろうと充分自覚しておられるのですが、なぜかニコニコ、仕方ないなあといった様子で、猫ノミ退治とご自分の治療に励んでいただきました。
“自分の気持ち”で行動する、とっても気まぐれな猫。犬のように、お手もお座りもしませんが、その魅力は何でしょう?“人の顔色を見ないこと”、あくまで自分に正直で、“忖度しないこと”が私には魅力です。タマは、甘えたくなると、啼き続けて注意を惹きます。やっと仕事が終わり、早く一息つこうと夕餉の支度で忙しい時でも、自分に注意が向くまで要求し続けます。根負けして手を休め、しばらく抱きしめてあげると、満足してそばの椅子に座をて占め箱を作ります(香箱座り)。ヒトとネコ、異種の生物が通じあっている、と感じる至福のひと時です。

おうえんぽりクリニック 並里 まさ子

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