ワクチンには、生きた病原体のウイルスや細菌の病原性を弱めた生ワクチン(麻疹、風疹、水ぼうそうなど)と、病原性を無くした不活化ワクチン(インフルエンザ、A型・B型肝炎、肺炎球菌など)がありますが、新たなワクチンの開発には5−10年はかかるとされていました。このようなワクチンの常識を覆して、わずか1年で新型コロナmRNAワクチンが実用化されました。mRNAワクチンのような遺伝子ワクチンは、製造過程での感染リスクが低く、遺伝子情報さえわかれば1ヶ月前後で開発でき、化学薬品と同じ要領で化学合成を通じて量産できます。米軍は毎年数千万ドルをバイオ企業にばら撒き、平時から多様な様式のワクチンを確保してきました。派兵地で感染症が起きたらすぐに兵に接種させるためです。臨床試験の第1, 2段階くらいまで進めておけばよく、いざ感染が起きたら、最短で大量生産・投入できます。mRNAワクチンの技術は、水面下で進んでいたバイオテクノロジーを用いた最新技術の発露の一つです。今、日本で接種が進んでいるコロナワクチンは、ファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンで、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)の設計図=遺伝子であるmRNAを脂質の膜に包み込んだ製剤です。これを筋肉内に接種し、mRNAがヒトの細胞内に取り込まれると、このmRNAを基にヒトの細胞内でウイルスのスパイクタンパク質が産生され、スパイクタンパク質に対する中和抗体産生及び細胞性免疫が誘導されることで、SARS-CoV2による感染症の予防ができると考えられています。
コロナワクチンは2回接種後、発症を90%以上抑制します。インフルエンザワクチンの有効率がせいぜい50%、当たらない年は20-30%であることを考えると、有効性はかなり高いと言えます。ワクチンには副反応がつきもので、接種部位の疼痛や発熱の頻度は高くなっていますが、重篤なものは頻度が低く、因果関係は明らかではありません。コミナティ接種後に、心筋炎の報告があるのは気になりますが、頻度は10万人に1人と高くはありません。
このワクチンの有効期間がどれくらいで、変異株への有効性は未知です。ワクチン接種が進んでくると、その中和抗体で排除されない変異が必ず生じるので、ウイルスとワクチンのイタチごっこになるかもしれません。その間、コロナウイルス自体が弱毒化して、風邪のウイルスの一つに成り下がることを期待しましょう。

 

今城内科クリニック

今城 俊浩